中学に通うようになってから数日後、
「規律検査」というものがあった。
主に髪や服装に対してチェックをするというもので、 男子は髪が耳や眉毛にかからない様にとか、女子はミツアミか肩までと、 今考えれば本当にどうしようもない事なのだが、 教師達が両脇に並び、その間を通って、 ”駄目だと思う奴はつまみ出す”というような事を、朝礼の後に毎回行っていた。
つまみ出された生徒はどうなるかというと、 後日、校舎の人目の付かない所に呼び出され、 教師がハサミで楽しそうに生徒の髪を切るという、 とんでもない行為がまかり通っていた。
「ヘラヘラと薄笑いを浮かべながら繰り返されたこの行為は、時に麻痺を生み出す」
後にタガの外れた教師達は、この規律検査に託けて、 教師として絶対に許せない行為を犯す事になる。
教師から行われた生徒への締め付けは、これだけではない。 体育の授業は必要以上に、延々と軍隊方式の整列をやらされたし、 美術の時間など、騒いでいた奴が何人かいたので、 教師が”連帯責任だ!”と言い出し クラス全員を正座させ、目を閉じさせた。 そしてあろう事か自分が履いていた靴で、 端から順番に頭を思いっきり殴りだしたのだ。
俺も殴られたが、 そのとき2、3日前から風邪をひいており、 殴られた瞬間、衝撃で鼻から鼻水が吹き出した。 慌てて手で押さえて誤魔化したが、 「皆目をつぶっていたので、見られていないだろう」と、 自分を納得させた事を覚えている。
それにしても、何を根拠に連帯責任だよ? 冗談じゃない。 俺が今こんな事をされたら、確実に暴れだすよ。 こうして何十年後かに、 生徒に半ば恨みを込めて書かれる、このような行為は、 到底、「教育」と呼べるものではない。