三章・学級崩壊−誰も知らない、学校のいじめ体験

ここで視点を変えて、
これ程のいじめが横行するクラス全体の雰囲気とは、 一体どんな物だったかを思い出してみたい。

入学当初は大人しい、何処にでもあるクラスだったのだが、 Uが中心になり出した頃から状況が変わってきたように思う。

一度担任の竹内が、 日ごろ騒いでいるUの机を蹴飛ばした事があった。 こんな事を、今まで一度もした事がない竹内がしたので 教室中が一瞬、静まり返ったのだが、 その時Uは、机を蹴られるほど大した悪さもしていなく、 何より「机を蹴る」という行為に及ぶまでに、 人として高まっているはずの、「人間の気迫」が全く感じられなかったのだ。

今考えると、
どうもこれは竹内へ誰かからの入れ知恵だったと思う。 仲間の教師から、「時には机を蹴るほど怒った方が良いですよ」 ぐらいの事を言われたのだろう。

子供はこういう大人の弱さに鋭く反応する。 授業が終わった後、数人の生徒がUの周りに集まり、 竹内がとった不自然な行動の分析をしていた程だ。

一方的な押さえつけで産み出される渦は、敏感に弱い所を探し出し、押し流す。

このクラスでも、怖い教師の授業は本当に大人しく受け、 そうでない教師の時には、徹底的に騒ぐという構図が出来上がっていた。 力で押さえつけるという事は、往々にして この道を辿る事になるだろう。

当然、全く恐ろしくもない竹内の授業は、狂わんばかりに荒れまくっていた。 誰一人、竹内の授業を受けている奴などいなかった。 もう竹内はクラス中の、いや学年中の生徒からナメきられていたからだ。 今思えば、ある種の「学級崩壊」だったのだろう。



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