バリケード−誰も知らない、学校のいじめ体験

当時、竹内の授業ほどではなかったが 音楽の時間も荒れていた。

一度、数人の生徒が、椅子でバリケードを築いた事があった。 教室自体を封鎖して立て篭もる程の物ではなく、 教師をからかうつもりでやったようなのだが、 そこに偶然通り掛った体育教師に、このバリケードを見つけられ、 「このバリケード作った奴は誰だ!!」と 積まれた椅子を払いのけて怒鳴り込んできた。 すかさず、教室内で遊びほうけていた、近くの二人を捕まえ、 「お前か?やったのは!?」と問い詰める。 その生徒は「教室中を遊んでいたから気が付かなかった」と、シラをきった。 もちろん、この二人は誰がやったのか知っていたのだが、 皆の見ている中で、「あいつがやった」とは言えないだろう。

この教師は遊んでいた罰として、 その場でビンタを食らわせていた。 けれどこの教師には”バリケードを作った奴”に意識が向いているので、 そのビンタは何処かやっつけ仕事的だ。 すかさず「このバリケード、誰が作ったんだ!」と、 ビンタを目の当たりにして、静まり返っている生徒達に向き直る。

しばらく沈黙が続いていたのだが、 ここに来て、観念した何人かの生徒が名乗りあげる。 その生徒達は、この教師に呼び出され何処かに連れて行かれた。 もちろん、ただではすまなかった事だろう。

俺はこの対応に文句を付けるつもりもない。 むしろまともな人間の対応だと言えよう。

しかし何故、教室にバリケードなのか? そこに生徒の意識が向かう要因を作ったのは 誰でもない、ビンタをしたこの教師も含めた、 理不尽な押さえ込みが、この行動を招いたのだろう。 あたかも、膨らんだゴム風船から手を離した時のように、 弱い所へ吹き出した事を忘れてはいけない。

強い者から、弱い者へ、 ヘドロの様な「抗し難い憎悪」が伝って落ちて行くようにね。



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