二学期・・・ 我ながら、あの時どんな思いで 夏休み明けの学校へ登校したのかを思うと・・・心が痛む。 けれど、この日は思ってもいない所から 心をズタズタに傷付けられる事になったのだ。
学校に着くと、夏休み明けの朝礼があり、とりとめの無い話の後、 例の「規律検査」が始まった。 何時もと同じように教師達が並んでいる間を通らせられる。 その時、俺は一人の教師から腕を掴まれて、列から引っ張り出された。 その教師は「耳に少し髪が掛かっている」と言う。
何かが妙だ。
・・・俺だけではない、 何時もより多くの生徒が引っ張り出されている。 しばらくして検査が終わると、捕まえた生徒を前に、教師がこう言う、 「今日、検査に引っ掛かった者は放課後、○○校舎に集まれ」と 何で今日に限って、放課後なんだろうと思った。 そして、その教師は続けて、こう言い出した、
「男は坊主にする」と。
耳に髪が掛かっただけで坊主・・・ 冷静に考えれば全くありえない話なのだが、 「学校」という閉鎖された社会の中で そこに君臨する独裁者とも言える教師達が 自分のさじ加減だけで平然と繰り返す、”人を人とも思わぬ”行為に 何時しかこれが”普通なのだ”と、俺も含めて生徒達も「麻痺」させられていた。 今思えば、この腐った教師達は ”それこそが”狙いだったのだ。
・・・時間は流れて放課後になり、 俺は教師達の言葉を思い出しながら 「まさかそんな事はしないだろう」と自分に言い聞かせ、言われた校舎へと向かう。
校舎に着くと、とりわけ人目の付かない奥まった所に 数人の教師達が待ち構えていた。 青いビニールシートを床一面に敷き詰め、 何処から持ってきたのか、 その手の中には”電気バリカン”が握られている。
俺はこの光景を目の当たりにし、 あの「坊主にする」という言葉の中に、「冗談」は含まれていない事を知った。 ・・・この教師達は、本気で”生徒の髪”をバリカンで刈ろうというのだ。
「夏休み明けの、タガの外れたガキ達を大人しくさせるには バリカンで頭を刈って、丸坊主にでもしてやれば、それこそ御釣りが来るだろう」 この位の事は余裕で考えただろう。
教師達は 生徒が大方揃ったのを見届けると 近場の生徒を一人捕まえ、よつんばいにして 生徒の髪を手に持った電気バリカンで刈り始めた。
最初の一人が切られる事で、堰を切ったように 一人、また一人と、教師達の手で髪が削ぎ落とされていく・・・
俺は、あの光景を絶対に忘れない。 今、目をつぶって瞼に映るその光景は・・・
まるで”屠殺場”の様だ。
電気バリカンの唸る音が絶え間なく鳴り響く中 ビニールシートの上に何十人もの、無理やり刈られた生徒の髪が、 山のように折り重なっていく。
(ここから怒りでキーを叩く指が何度も止まる事になったのを、ここに書き記す)
絶対に許せないのは、 この教師達は明らかに楽しんで生徒の髪を刈っていた事だ。
生徒の頭を刈りながら、山のように切られた髪を見て 「これでカツラが出来るな〜」と笑いながら近くの同僚に話しかける教師や、 別の教師が「バリカンが足りない」と言い出し、 手持ち無沙汰だったのだろう、 「どうせ坊主にするのだから、ハサミで試してみよう」と これも笑いながら、生徒の髪をハサミで無造作に切り付けていた。
結局、ハサミで全ての髪を切れるはずも無く、 「やっぱり駄目だな」と言い残し、 虎刈りのような頭になったその生徒は、やはりバリカンで刈られる事になった。
・・・こんな事をしていいのか? 教師がこんな事をしていいのか?
俺はこの教師達を半殺しにしてやりたい衝動に駆られる。 考えてみて欲しい こんな実験台のようにハサミで髪を切られた生徒の気持ちを思うと、
”許せる訳がない”