名目上、奴らの仲間になった後、
次の日、奴をおんぶって、
校内を歩かされた。
他のクラスの女の、
誰々を触って来いとか言われた。
そんな事できるわけない。
それをしたらもう終わりだ、
それは断固として拒否した。
当たり前だ。
ホウキンもその後、何回かやられた。
でも泣いたり叫んだりしなかった。
「もう辞めろよな〜」って
冗談になるようにしていた。
奴は、
「なんか強くなったな」と言っていた。
そんなんじゃない、
馬鹿への対処の仕方が解かってきただけだ。
その後、
ホウキンのターゲットは他に移った。
クラスの弱い奴が
手当たり次第にやられていった。
もうやられる奴が見当たらなくなると、
今度は仲間内での
弱い奴がターゲットになっていった。
”共食い”だ。
俺に散々、いじめや
嫌がらせをしてた奴らも同じ目にあった。
まさか自分がいじめられるとは、
夢にも思わなかっただろう。
その中には、
自分がいじめられるのが分かって、
パンツの上に
水泳のパンツを履いて来ていた奴もいた。
人のは良くても
自分のは見られたくないらしい。
奴らが海パンもぬがそうとすると、
海パンのひもが解けなかったみたいだ。
奴もホウキンが嫌で、
ひもを硬く結んだんだろう。
しかしそんな海パンは、
イカレタ奴らにはなんにもならない。
「ハサミ、もって来い!」との一言で、
誰かがハサミを持ってきた。
結局、奴もやられていた・・・・
次は誰が犠牲になるのか?
そんな事、誰にも分からなかった。
僕へのいじめは無くなったけれど、
いじめ自体がなくなったんじゃない。
ただ他へ移って行っただけ・・・
いじめに
解決なんて言葉があるのだろうか?
誰もいじめを、
止めることなんて出来やしなかった。
誰もがいじめから、
逃れるだけで精一杯だったあの頃。
誰か一人が犠牲になっていれば、
安心していられた。
その瞬間だけは、
自分がやられないことを、
確信できたから・・・
──いじめ
それは相手に苦痛を与えて
反応を楽しむ、悪趣味な手段。
どんな反応をするのか、
手を変え品を変え、
あらゆる苦痛を与えて実験する、
人体実験のようなものだ。
さしずめ、
僕がいじめを受けなくなったのは、
反応がなくなったからだ。
実験の意味を成さなくなったからだ。
あの頃、僕が頑なに守っていた、
我慢や忍耐など必要じゃない。
反応があって、
おとなしいモルモットは実験に最適だ。
ただそれだけの事だったんだ。
僕に残ったのは、
不信と猜疑と病んだ心と恐怖だけ。
そして、この心の傷が、
その後の人生を
間違いなく狂わせて行った。